小説一覧

ショートショート

  • はじめの一歩

    「うーん……」僕はうなだれていた。目の前には未使用の原稿用紙がある。『僕の空想を表現したい』たったそれだけのことだった。小さな幻想の断片が頭の中にある。それをどう繋げていくのかわからなかった。そもそも僕は空想を現実化させる方法を知らない。僕…

  • 薄っぺらい人生の味

    気がついたら、私は見知らぬ場所にいた。真っ暗な空間が続くばかりで、周りには建物や灯りがない。果てがない虚空の中に私は立っていた。「おっ、今日の飯はお前か」背後からふいに話しかけられて、私は驚いた。いつからそこにいたのだろうか。恐る恐る振り向…

  • 孤独な山羊

    昼休みのオフィス。事務仕事を人段落させ、私は一人で食事をしていた。他の事務員は皆ランチに出かけていた。私が一人で食事をするのはいつものことだ。「こうなるとはわかっていたとは言え、少し寂しいものがあるわね……」私も入社した直後はランチに誘われ…

  • ソンタクドータク

    「おっ、結月。こっちに銅鐸があるぞ」朔太は私の腕を引っ張りながら、銅鐸の元へ向かった。今日は朔太と博物館でデート。朔太が好きな銅鐸が展示されるということで、いつも通り私は彼についていくことにした。朔太は歴史オタクだった。とくに弥生時代がお気…

  • フェディバースの観測者

    日光が入らない暗い部屋。遮光カーテンに遮られ、今が日中なのか夜なのかわからない。部屋を照らしているのは、パソコンとモニター、そして周辺機器の光。反射光に照らされながら、俺はパソコンで黒い窓を開き、新天地への鍵を入力する。『1xx.xxx.x…

  • 商人の伝承と聖女の書物

    フィスーン地方にある小さな村のはずれで、1人の少女が旅立とうとしていた。「待てよアンドレア!」アンドレアと呼ばれた少女は、足音と誰かがを叫んでいる声を耳にする。アンドレアは1冊の書物を手にしながら、後ろを振り返った。一人の青年が、アンドレア…

長編小説