クリスティーナに転生してから1週間が経過したころ、1つの凶報が城内をざわつかせた。
「アトマシア軍が奇襲を受けた!?」
クリスティーナの叫び声が執務室に響き渡る。
アトマシア軍の敗北、そして王であるサンローラと主要な家臣の訃報。
クリスティーナを動揺させるには十分すぎるほどの報告だった。
『私』がプレーしてた時は勝利してたのに。
想定していた話が狂い始めているのを感じたと同時に、クリスティーナに不安がよぎった。
「ねえ、ギルサンはどうなったの?」
伝令は口ごもりながらクリスティーナに報告をした。
「それが……」
ーーーーー
時は戻り、ゼネゼラタ・ノラリカ国境付近の森林。
4人の青年たちが馬に乗って森を駆けていた。
背後には数十人の騎士が彼らを追いかけている。
「おい、フルティガー!何とかしろ!」
「無茶いうな!タヅガネ、俺だってもう疲れてるんだぞ」
フルティガーと呼ばれた少年が、息を切らしながらタヅガネと言い争う。
「あんたたちいい加減になさい!声で居場所がバレるじゃないの!」
オレンジの髪とパープルのメッシュが入った青年ーーマティスが二人を叱る。
マティスの背中には、意識を失い、かろうじて余喘を保つギルサンがいた。
彼が息絶える前に追っ手を振り払い、治療しなければならない。
「セイコー!本当にこっちに村があるのかよ!?」
「確かにこの方角に村があるはずだが……」
セイコーは地図を片手に村の方角を確認しようとしたとき、草陰が揺れる音に気付く。
「誰だ!?」
小動物か、追っ手か。4人がとっさに身構える。
草陰を揺らした正体はどちらでもなかった。
銀髪のロングウェーブの少女。
彼女のぱっちりとした金色の瞳は、彼らをまっすぐ見つめ、物怖じせずに視線を森の奥に誘導した。
「こっちに来てください!村の外れに私の家があります!」
「……お前の言うことを信用できると思うか?罠にしか見えないのだが」
「タヅガネ!なんてことを言うんだ」
セイコーが眼鏡を上げながら、タヅガネをたしなめる。
タヅガネの言い分はもっともだ。だが、ここは彼女に賭けるしかないとセイコーは結論付けた。
いや、今はそうするしかなかった。
「ーー案内してくれ」